「でも…こんな時間だし……」


「そんな事いいよ。宗が嫌じゃなかったら」


どこかでお互いの胸のうちを探りながら会話をしてしまうのは、あの頃から変わらない。


あたし達にはいつだって見えない境界線があったよね。



「じゃあ、少しだけ…お邪魔しようかな」


「どうぞ。どうぞ」


あたしはそのままマンションへと向かって歩き出した。


早く流したい。


体についたものが宗に見透かされていそうで怖いんだ。


「それにしてもでかいマンションだな」


「あー店が払ってくれてるから」


「……そうなんだ」


こんな時間に仕事が終わり、こんな場所に住んでいるなら、あたしの仕事がどういうものなのかってことくらい宗にはわかっているだろう。


隠すつもりはない。


どんな場所で働いているか、聞かれればそのまま話すつもりでいる。


ただ、少しだけ宗の反応が気になるけど…――