「それは……」


少し怒鳴るような口調になった浅葱の言葉を最後まで聞かずに、あたしは言葉をかぶせた。


「わかっています。浅葱さんの気持ちは……ゆめかも浅葱さんと同じ気持ちだから」


「ゆめかちゃん…――」


いけるかも。


浅葱の表情は一変し、あたしを哀れんだ瞳で見つめている。



「でも、お仕事だから……仕方のないことなんです」


「そうだよね。ゆめかちゃんが辛い思いをしていたんだね。気付いてあげられなくてごめんね」



よしっ。


ここまできたら、あとはあの台詞を言うだけ。


ずっと考えていた、浅葱を納得させるための言葉。



「浅葱さんは悪くないですよ。ゆめかが他のお客さんについても、ゆめかの本名を知っているのは浅葱さんだけです。だから、ゆめかは頑張れます」



「ゆめかちゃん……違うな。カナちゃん、頑張って」


浅葱に肩を抱かれ、そう囁かれたあたしは思い通りになって嬉しいはずなのに…――


言いようもない不快感に包まれていた。