「ゆめか、指名だ」
ボーイの声が浅葱の到着を知らせる。
カツンカツンとヒールを鳴らし、今日も浅葱好みの女を演じる。
何枚もの仮面を被りながら。
「浅葱さーん。いつもメールありがとう」
品のあるスーツを着こなす浅葱は、毎日こんな所に通うほど女に不自由はしてなさそうなのに。
「ゆめかちゃんに喜んで貰えるなら、毎日メールしないとな」
「ホントですか?約束ですよ!」
会話をしながら、自然に浅葱の腕に手を絡ませる。
フワッと香る浅葱の匂いはいつも違う。
今日は柑橘系の匂いだな。
浅葱が話を始めると、相づちをうちながら、お酒を作る。
そして、暫くすると1日で最も長く感じる時間が訪れるんだ……
ボーイのアナウンスに照明が落とされる。