「でも颯馬は昔から恋愛にはまったく興味がなくて。……私はただ、颯馬のそばにいられればそれだけで充分でした。だからこそ今の仕事に就いたんです」


そう言うと笹本さんは、目を伏せて小さく深呼吸をした後、再び私を真っ直ぐ見据えてきた。


「なのに急にあなたが現れた。……今まで異性に対して興味を持ってこなかったのに、亡くなったミャーにそっくりって理由で、あなたと結婚するって言い出して。仕事が生き甲斐の人だったのに、いつの間にかあなた中心になってしまいました。あなたに会いたいがために仕事を頑張って、嬉しそうに退社していって。……あなたにわかりますか? そんな颯馬の背中を見送っている私の気持ちが」


苦しそうに表情を歪ませ、大きく瞳を揺らして訴えかけてくる笹本さんの姿に、彼女が南さんを想う気持ちは本物なんだって思い知らされていく。


私よりも昔からずっとずっと、南さんを強く想っているのだと――。


「私の方が颯馬のこと、ずっとひとりの男性として想ってきました。……この気持ちは、この先もずっと変わりません。颯馬を想う気持ちでは水谷さんにも、もちろん他の誰にも負けない自信がありますので。……なにより彼のことを一番理解することができるのは、自分だと思っております」


「笹本さん……」