話さなければよかった。そうだよ、どうして海斗じゃなくて亜優に話さなかったんだろう。


この前は、ただお見合いした報告しただけで亜優だいぶ興奮しちゃっていたから、今の悩みまで相談することができなかったけれど、まずは亜優に話すべきだった。


いまだに笑い続けている海斗に苛立ちは収まらない。

「お湯、入れてくれてどうもありがとう!」

ツンとした声で言い、ポットを手に給湯室を後にすると、すかさず海斗も追い掛けてきた。

「あ、待てよ美弥。笑って悪かったって」

すぐに隣に来て両手を顔の前で合わせられたけれど、すぐに怒りが収まるはずなどない。

「いいえ、むしろ海斗に相談した私がバカだったから謝らなくていいよ」

「そんな怒るなって」

事務所を後にし外に出ると、海斗が私の前に回り込み、行く手を阻んだ。


そして再度顔の前で両手を合わせ、謝ってきた。

「ごめんってば。……もう笑わないから」

調子のいい奴だ。けれど本気で謝られたら、許さないわけにはいかなくなる。

「もういいよ。……話聞いてくれてありがとう」