やっぱりまだどこかぎこちない。気を遣っているし。


南さんが買ってきてくれたケーキは、評判通り本当に美味しくて感動ものなんだけど、夕食時からずっとソワソワしちゃっているお父さんが、気になって仕方ない。


チラチラと様子を窺ってしまっていると、南さんは手にしていたフォークを置き、真剣な面持ちでお父さんを見据えた。


「水谷さん、この前は大変申し訳ありませんでした」

「え……颯馬さん?」


急に頭を下げ謝り出した南さんに、お父さんは困惑した様子。それはもちろん私も。

南さん、急にどうしたの?

お父さんとふたり、顔を見合わせてしまう。


「あの、顔を上げてください。颯馬さんに謝られることはなにもないじゃないですか」

「いいえ、あります。ミャーと……美弥さんと結婚前なのにあんなことしてしまったんですから」

あんなことと言われて思い出してしまうのは、もちろんあの日のこと。