そう思うと、ますます彼の気持ちも自分の気持ちもわからなくなる。

心の中はモヤモヤしていてすっきりしない。

「……とりあえずご飯の用意をしないと」

途中になっちゃっていたし、お父さんもお腹を空かせているだろうし。


再び包丁を手に持ったとき、インターホンが鳴った。そして微かに聞き覚えのある声が聞こえてくる。

「ミャー、こんばんは」

「南さん!?」


なんというバットタイミングだろうか。お父さん、また気を遣って出ていくパターンじゃない。

けれどお父さんは自分の部屋にいるし、南さんが来たことに気づいていない様子。


包丁を置き、急いで玄関のドアを勢いよく開けると、南さんは少し驚いた様子で立っていた。

「あ、すみません。突然開けたりして」


声を潜め謝ると、南さんは「いや、それよりなにかあったの?」と心配そうに尋ねてきた。

「いいえ、その……」

一度家の中の様子見て、お父さんが気づいていないことを確認し、再び声を潜めて理由を話した。