「志乃、次体育だよ
今日はバスケだよー!」
「葵、あんたバスケしてると彼のこと思い出せるから嬉しいんでしょ」
「なんで知ってるの!
だって高尾くんが好きなバスケを自分がしてるって幸せじゃん」
「きもいぞ」
「ひどい!」
理科準備室前を二人の生徒が通る
成績優秀、学年の男子からの人気も高い山中葵と
口は悪いが素直で可愛いやつ宮内志乃
意図して隠れているわけではないが、
準備室の前でケラケラと話している
「お前だって、俺のことが好きで化学を頑張ってんじゃん」
今日の夜、あいつんち言ったとき
ちょっとかわいがってやるか
準備室から出て、びっくりさせてやろうと思ったら
「志乃はこの前告白されてたひとと付き合うの?」
は?
聞いてねぇけど
あいついつも学校であったこと
聞いてないのに言ってくるくせに
あいつもあいつで
「うーん」
とまんざらではなさそう
なんだよ
つーか誰だよ
告白したやつ
ガラ!
「二人とも、次体育なんだろ、早く行きなさい!」
たぶんかなり不機嫌な声をしていた
二人は驚いて、パタパタ体育館に向かっていった
言いようのない気持ちだなぁ
普段俺、あいつをこういう気持ちにさせてんのかな
「ありがと、葵」
パス練をしながらお礼を言う
「いいけど、あれなんだったの?
準備室の前で言ってほしいセリフがあるって
しかも、コクられたって
誰に聞かせたかったのさ。
雪先生しかいなかったじゃん」
「それでいいの
ちょっとはね、片思いの気持ちを知れってことなのだよ!」
「???」
今日は私の勝ちだね、センセイ。