分厚い扉を抜けて、ようやく目に入った日の光に少し目を細める。
「眩し………あ、あかり!」
隣で私の袖を引っ張る結菜の方を見ると、先ほど話していた馬場くんが前から歩いてきた。
サラッとした髪が靡いて、スタスタと歩く。
彼は私なんて知らない。
だって、話したこともないから。
当たり前のように彼が私の横を過ぎ去った。
自分ばかり意識して馬鹿みたいに下を向く。
そして、過ぎ去ってから決まって振り向いてしまうのだ。
彼が残した空気を感じて、どうしてか涙が出そうになる。
本当にそれが馬鹿みたいで苦しい。
「あかり~馬場くんのこと好きすぎ」
「っちが!!なんかその…気になるだけ!」
そう取り繕ってみても、赤くなった頬では説得力がない。
視聴覚室に入って行った馬場くんを見送って、結菜と教室に戻った。