「確証ないならいきなり声かけても変な人だよね」
結菜の言葉に頷く。
いきなり「ハンカチ貸してくれた方ですよ?」と声をかけても、違ったら確実に変な人扱い。
どうしてあの時、同じ電車に乗ってでも顔を見なかったのかと何度も何度も後悔した。
「でも、泣いてるあかりに名前も言わずにハンカチ貸してくれて……もし本当に馬場くんなら高ポイントだね!
いっつも何考えてるのかわからない不思議ちゃんって有名だし」
結菜の言う通りだ。
背も高くて、顔立ちも整っているのに、どこかその身のこなしのせいで不思議ちゃんと言われる。
その大きな理由はやはりあまり喋らないからなのだろうか。
「そうだね」
私はぽつりとそう返して、視聴覚室を出た。