そう言って、馬場くんはまた無愛想な顔に戻る。 「馬場くん、ありがとう。 このハンカチのお陰で私も救われたの」 教科書を片手に戻ろうとした彼が振り返り、また近付く。 「せっかく、返してくれたのに…なんでまた泣いてるの?」 いつの間にか流していた涙に気付いて急いで袖で拭く。 「赤くなっちゃうよ」 それはいつしか言われた言葉。 馬場くんは私の頬に着いた涙をハンカチで拭うと、差し出した。 そして、そのまま歩いてしまう。