馬場くんが私の顔を覗く。
近い彼の瞳が私を映した。
その瞳に掴まれるように心がザワつく。
「あ、あの…これ借りてたハンカチ……」
やっと出せたそれは握りしめていたせいでシワになっていた。
「やだ!アイロンしたのに」
悲しそうな私の手からハンカチを受け取る彼はふんわりと優しく微笑んだ。
その笑みに私は見惚れてしまった。
「俺はあまり学校が好きじゃなくて、時々来ては馴染めない空気が辛かった。
でも、君の書くこの絵は好きだった」
トンと細い指が私のイラストを指差す。
「本当は見過ごしても良かったんだけど。
このイラストに救われた恩があるから。
来る意味を勝手に貰っていたから、柄にもなく泣いていた君に声をかけた」