授業中、ぼーっと黒板を見ながら遠くを見ていた。







初めて馬場くんに会ったのはハンカチを渡されて1週間後だ。






それまで毎日同じ時間に同じ場所で待ってはみたけれど見かけられなくて、諦めかけていた時だった。






廊下ですれ違った馬場くんの後ろ姿を見て、この人かもしれないと思った。

はずなのに。






私はカバンから丁寧にたたんだハンカチを出して、見つめた。






ずっと、好きだった人から別れを言われる辛さを救ってくれたのはこの人だ。









とても温かいこのハンカチをぎゅっと抱きしめる。








(間違ってもいい…声、かけてみようかな)









私はそう決めて、ハンカチをブレザーのポケットにしまった。







*°








チャイムと同時に立ち上がり、視聴覚室に走った。





クラスにいる中で呼ぶのは勇気がいる。




だから、廊下で話しかけたい。