彼と仲良くなってみたいという衝動は抑えがたいもので

どうすれば仲良くなれるのかとりとめもなく考えたが

メアドを書いた紙を渡すのは相手に不信感を与えかねないし

スマホを片手に持つ彼に直接話しかける勇気も持てない

再び一瞥すると彼は傘を座席におき忘れて電車を降りようとしていた



咄嗟に自分が降りるカササギ駅の三つ前のモモシキ駅で降り追いかけた

「すいません。電車に置き忘れたこの傘
あなたのですよね」

さっきまでは降っていなかった雨に狼狽したたずむ彼に声をかけた

「わざわざありがとうございます。僕のです。」

彼は軽く微笑んだ

その笑顔に目を離すことができず心臓がドキッとした