「お昼を過ぎました。もう、嘘をついちゃ駄目ですよ」
「あ……」
エイプリルフールは午前中のみの限定的なイベント。
「あの、ずっと好きでした!」
「い、いきなりすぎません?」
「だ、だって……」
素直な人。優しい人。
嫌いだったエイプリルフールが、好きになっていく。
「で。本当にネックレス直せるの?」
「やってみます!」
私は堪らなくなって噴き出す。
「あ、あの。ごめんなさい!」
久しぶりに思いっきり笑った。久しぶりに泣くほど笑えた。
「えっと……」
「莉子です。笑わせてくれて、ありがとうございます」
「あ。僕は……」
あの日の別れから、私は動けなかった。だって嘘の答え合わせをしないまま終わりにしたから。
手紙が全て嘘だったこと、エイジは気づかなかった。私も本当のことは言わないでいた。
馬鹿だよね、本当に。
答え合わせをしていたら、何かが変わっていたかもしれないのに。
でも、答え合わせをしたら、この出会いはなかったかもしれない。
エイプリルフールなんて大嫌い。
でも、
エイプリルフールだからこそ、言えた言葉がある。
「やっぱり、あなたのこと。好きです」
さようなら、嘘つきな私。
さようなら、嘘つきな元彼。
ありがとう、気にかけてくれた人。
ありがとう、笑わせてくれたあなた。
嘘で固められたような出会いだけれど、
この出会いが本物になることを願って。
エイプリルフール。
嘘つきだって幸せになりたい……。
END
こんにちは。または初めまして。
また短編を書いてしまいました。
樹乃ななせです。
エイプリルフールを題材にして書いてみた嘘ばかりな内容になっています。
1日で仕上げたので、あまりいい出来ではないかもしれませんが。イベントものとして楽しんでいただけたら嬉しいです。
ちなみに本編では書きませんでしたが、手紙のことを。
各行の先頭部分の文字を並べると「エイプリルフール」になります。
かなり無理矢理ですが。
こちらの作品、開いてくださりありがとうございます。
読んでくださった皆様に感謝です。