「よぉ、Arist!
生きてるか?」

アリスト
「名前を発音良く言うのは
辞めてくれ」


「うーむ…へんじがない…
ただの生けるしかばねのようだ」

付き合ってられない。
屍の話題を適当に流し、
授業の話題へ。


「数学のピタゴラス先生のさぁ、
なんだっけ、あの〜…」

アリスト
「三平方の定理?」


「そうそう!あれがさぁ、
とにかく分からん」

アリスト
「ああ、あれか。
俺もよくわからん」


「あの人なぁ…
ちっと難しいよな。
言わんとする事は分かるんだけど…」

「操く〜〜ん!!」

突如として、教室に怒号が響く。

アリスト
「お、君のマドンナのお出ましだよ」


「あいつ…お付き合いは出来ないってきっぱり断ったのに…」

アリスト
「いいんじゃないか?
彼女、結構美人だし」


「ふざけちゃあいけねぇや。
俺ぁ生涯独身貴族よ」

彼女…つまりイリスが
操に恋着しているのは専ら
有名である。
夢であったアイドルを放り
操の通うアカデミアに入学してくる
その執念と愛情は、賞賛に値する。

イリス
「操君!どうしてあたしじゃ
だめなの?」


「だから、俺じゃあ
君を幸せにさせるような
大層な人間じゃないと…」

イリス
「だから!貴方の側にいることが
私の幸せなの!」


「ひぃ〜勘弁してくれぇー」

ふふっ、と笑みがこぼれる。
ああ、これが「愛」と言うものか。
僕と、イデアとの間では成立し得なかった、「幸福とやすらぎ」という
ものだろう。