しばらく私のことをじっと見たその人。
「なぁお前さぁ…「ねぇ、名前何?」
家に帰れ、とか言われたら嫌だから遮って名前を聞いた。
「…桐崎颯斗」
桐崎くんか。
「お前は?」
「私は光鈴です」
「ふぅん。で、これから光鈴はどうするつもりなわけ?」
突然投げかけられた質問に硬直する私。
「どうせ家出でもしたんだろ」
バレてるじゃん、なんて思いつつもこれからのことなんて何にも考えていない。
「ちなみに終電は終わってます」
「シューデン?」
最後の電車だよ、とやや半ギレで答えられた。
ということは今日はもう帰れない、というか二度と帰りたくない、あの家に。
「もうあの家に帰りたくない」
ベッドに突っ伏した私を見て、
「お前なぁ」
と呆れられているのがわかる。
「だって政略結婚なんてお断りだもん!あんな人のこと駒扱いする親なんて大っ嫌い!!」
うっかり口を滑らして色々言っちゃったから、たぶん桐崎くんは困っただろう。