たしかに、私の父と母を見てみれば、愛し合う関係にはあまり見えないけれど、
一般常識的に好きな人とお付き合いして、プロポーズされて結婚する、それが普通なはず。




「クラスにも婚約している子はいるでしょう?」




名門家のお嬢様や御曹司的な人が通うような高校だからそりゃあクラスにちらほらいる。




「もしかして光鈴は恋愛でもしたいのか?」




じろり、と父に半分くらい睨まれた。




目線で「黙って結婚しろ」的なことを訴えているのが分かる。




昔からそうだ、父も母も当然のように私がふたりの言うことを聞いて、ふたりの意に反したような行動は決してとらないと。




どこまで忠実な犬くんになってるんだろう。




「まぁ、今は婚約するだけだし、あなたの今の生活は大きくは変わらないから安心しなさい」




いやいや、婚約するだけだしって。




「再来週くらいにはホテルで顔合わせでもしようかと話しているからそのつもりで」




絶対事項だ、何か言っても変わらない。




「…はい」




仕方ない話だった、運命はそういうものなのね。