「私もこうして結婚したの。名門家に産まれたものの宿命なのよ」




母も名門家出身で、桜坂家に嫁いできたという話はよく聞いたけど、よくも好きな人じゃなくて結婚したよね。




私は結婚=幸せになる、だと思ってきたのに。




黙って今まで従ってきたけれど、さすがにさ。




「結婚相手まで決められないといけないんですか?」




父と母の前で初めて反抗した態度を見せた。




最初は私の態度に唖然とした2人だったけど、




「当然のことだ。光鈴は桜坂家の大事な娘。そしてそれは、名門家と繋がりを持つための大事な駒でもある」




なんてさぞ当然のことのように言うんだから困った話。




父から告げられた「駒」というセリフ。




戦国時代の武家の姫じゃあるまいし、だいたい今この時代にそんな政略結婚みたいなものが存在しているということ自体が現実味がないけど。




だけど、それは目の前の父から告げられている。