〔光鈴side〕
晩春。
夏に近づいてきて暑さを感じるようになった今日この頃。
私は怒りというか呆れというものであつい。
一言でいえば「は?」
だって、ある朝突然にね、親から、
「あなたはこの人と婚約したの」
とかありえないでしょ。
私、桜坂光鈴、高校2年生。
ファッション関係のブランドなどを経営する一流企業の社長が私の父。
いわゆるお嬢様っていうやつだけど、お嬢様気質とかそういうのはあんまりないし、毎日生活してて、
優越な気持ちになることよりも、ストレスの方が多いのが事実で。
そりゃ、家はそれなりの大きさだし、執事とか専属のシェフなんかがいるけど、
しょっちゅうパーティーに参加して、「ごきげんよう」みたいなことをしなくちゃいけない。
結構めんどくさくて嫌なんだけど、
「桜坂家の娘として相応しい人にならなくてはなりません」
って言葉を親からも執事からも散々言われてきた私にとって、為す術はない。