朝ー
ここは、メフテルハーネ城。【世界】をまとめる王族、メフテルハーネ一族が集う城。

そこに、この物語の主人公が居た。


「殿下、起きてくださいまし。」

「ん…おはようございます、ミディー。」

そう言って体を起こす。

「女王陛下がお呼びですよ。」

「お母さまが…?」

「はい。それと、お誕生日おめでとうございます、殿下。」

「ありがとう。」



この少女は一つも表情を変えない。

それは、彼女が【感情が無い】から。

ある種の呪いで、彼女はなにも感じること無く、育っていった。

笑うことも、泣くことも、驚くことも、楽しいと思うことも。

なにも感じることが出来ない。

リュリシュトは仲の良い召使いに聞いたことがあった。

「何故みんな、私と違って…感情というものががあるのですか?みんなが…変わっているだけなのですか?それとも…私が、変わっているだけなのでしょうか…。」

その時、その召使いはこまった顔をしていた。

どこか悲しそうで…優しい笑みを浮かべていた。

そしてその召使いは、こう答えた。

変わりない と。


「お母さま、お呼びですか?」

そこには紫のドレスを身にまとい、笑みを浮かべている美しい女性が居た。

「ええ、ハッピーバースデー、リュリシュト。」
「貴女ももう、9歳となるのですね…。」

「これを開けてみなさい。」

「………?」


ビリッ



「これは…ロケットペンダント…?」

「ええ。」


パカッ


「…きれい。」

「ありがとうございます。お母さま。」

「午後からパーティーがあるので、出席なさって。」
―――貴女のパーティーよ
そう言ってリュリシュトをドアの前まで見送った。