やや暫くすると、カズキは出てきて

「やっぱりいねぇ」

苦笑いをして知らせてくれた。

「誰も居ないの?」

「うん。居ないなぁ。
弟と妹もいないから、遊びに行ったんじゃないかな?」

「…そっかぁ…」

お母さんがいなければ、病院も行けないし、どうにもならない。

しかも、明日は修学旅行。

どうにかなる物でもなかいなぁ…。

こんな調子だと、カズキは明日本当に、修学旅行は行けるのだろうかとさえ、不安を感じる。


「カズキ…お母さん。
明日修学旅行なの、知ってるのかな?」

「…ん。多分??」

「…多分って…」

「だってよ。遠足あっても帰ってかない事は、普通だしな。」

「…お弁当どうしたの?」

「金があるときは、店から弁当買ってそれを、持って行ったりとかもあったし。
ない時は、仕方ないから休む。」


「…マジ??」

「うん。普通だな。」

屈託のないカズキの、笑顔を見て、なんだか自分が、ぬくぬく育ってしまった事に、恥ずかしくなってきた。


「お母さん、帰ってくるといいね。」

そう言いながら私は、カズキの手をそっと握りしめた。