「昔、俺には義理の妹がいてね。」

「…松岡さん?」


「妹は俺の事を好きだったんだ。

もちろん、俺も好きでね。
違う意味でね。
でも、俺は気持ちに気がついてやれなくて」





「…でも知らなかったんでしょ?」




「まぁね…。でも気持ち悪いだろ?妹が好きになっていたなんて。」




トラックが猛スピードで時折すれ違う。





「妹も選ばない、他の女も選ばない。
どっちつかずの俺に、妹は期待ばかりしていて、


苦しんだんだろうな・・

自殺したんだ」



「……」





「あの時、好きなら妹を奪えばよかったんだって。

それか、冷たく突き放せばよかったって…

似てるんだ。

一生懸命ひたむきに、一人の男を思う姿が。

妹に似てるんだ。」






車はゆっくり、海辺に停車した。

松岡はシートベルトを外し、身を乗り出すように話してきた。




「舞の気持ちは、まだあいつの所にあるのは、わかっているけど…

舞…お前を行かせたくないんだ。」




波がやけに煩くざわめきだした。