「こんな時に、カズキの話しなんかしないで!
カズキなんて、どこにもいないじゃない!
いつも私の側になんて、いないじゃないのよ。」


「…舞…。」



「今、側にいない人の事はどうでもいいのよっ!!
じゃあ、平田はどうなるの?
平田と結婚するんでしょう?」

ユキは押し黙ったまま、
ギュッと唇を噛み締めていた。



「わかったら、早く行って!私も諦めないから。」



ユキも納得したのか、ゆっくりと頷き、再び走りだした。



「ひゃっほーい!」



背後から奇声が聞こえる。



「ウサギちゃん。発見!」




その言葉と同時に、私の袖が強く引っ張られ、私は大きくバランスを崩し、地面に叩きつけられた。




「舞--!!!」




気付いたのかユキが振り返り叫んでいた。



「ユキ!!行って!」




もう一度立ち上がろうとするが、私は両足を押さえつけられて上手くたちあがれない。




「必ず助けに戻るから!」






お願い!!


神様!!上手くユキだけでも逃げきれて!




「無駄な抵抗やめろよ。
あいつもすぐに、喰われちまうから。」




見知らぬ男は、ヘラヘラ笑い私の上にまたがっていた。