カズキ、10年愛〜不良のあなたに恋をして〜前編

あの出来事をきっかけに、松岡からよく電話がかかってくるようになった。

私の電話番号は、シュンさんから聞き出したようで。


シュンさんも『松岡なら安心だから』
と言う事で教えたようだった。


実際、会っても陽気で、楽しい会話をしてくれて、沈みがちな私の気持ちを明るくしてくれるの。





夏休みも後半…に差し掛かる。




ユキから、花火を見ようと言う誘いメールがあった。


メンバーは、平田と松岡。


シュンさん夫婦は、お盆と言う事もあり、里帰り。


何故…松岡が一緒なのかと言うと、シュンさんの代わりのボディーガードらしい。


今の所、何にもないんだけどなぁ。


シュンさん夫婦の心配症は、今に始まった事じゃないけどね…。



カズキもこのぐらい居てくれたらいいのになぁ。




松岡が車で行こうと申し出をしてくれたのだが、混雑を予想して、結局地下鉄で行く事になったのだ。












花火を見ると言う事もあり、私とユキは浴衣で行く事にした。

だって、せっかくの花火だよ?


気分出さないとね!


私は、淡いグリーンの蝶々模様の浴衣を、お母さんに着せて貰い、髪をアップにまとめて行く事に。




家を出る途中、メイクした顔をお母さんに、見られたけど、花火大会だから?

それとも気がついてないのかな?

何も言わずに笑顔で、送り出してくれたのだった。


待ち合わせ場所に、私が一番乗りをした。




時計に目をやると17時45分。

18時までには、15分ほど早かったみたい。


待ち合わせ場所について、すぐにユキがひょっこり姿を現した。


「お待たせ~」




足早に下駄をカポカポと鳴らし、黒い浴衣で花火の模様が描かれた、ユキらしい大人っぽい浴衣を来ていた。


「わぁー!ユキ素敵だよ。」

「舞こそ可愛いよ」

「平田もこれでメロメロだね?」


「あら!失礼ね。
彼は、いつでも私にメロメロよ」



そう言って二人で笑い出してしまった。


そうこうしてるうちに、予定の時効に。

まだ来ない二人を、キョロキョロ探してみる。


すると前方から、平田と松岡の姿を発見!

私達は大きな声で、手を振っり合図をしようとしたその時!



「みぃーつけたぁ。」

頭に何かが当たったようで衝撃が走った。










舞…

そばにいてやれなくて



ごめんな…。


俺・・バカだから


肝心な時


いてやれなくて…



舞…





どんな姿でもいい





どうか…



どうか…





笑っていてくれ…



-----------------………

「ん…」

鈍い痛みと共に、私は

目を覚ました。




ここは…


どこなんだろ…?







見渡すと、何処かの
倉庫のようだ。





湿っぽい、土の臭いがする。






すぐ隣には、ユキが意識を失って横たわるている。


時々、何かで殴らた頭がズキズキとうずいていた。






瞬間私は、拉致されたんだと悟った。






辺りを見渡すと、まだ誰もいない。



「ユキ…ユキ…起きて!
起きて!」




声を殺しながら必死で、ユキを揺り起こす。


「ユキ…お願いだから、目を覚まして」




「ん゛…」




ユキは、かろうじて意識を取り戻したようだ。


「ここは?」


ユキも頭を殴られたらしく、頭を摩りながらゆっくり体を起こした。


「わかんない…。
でも、逃げないと。
やばい感じだよ。」


「そうだね。」



浴衣を直しながら、辺りを見渡し始めている。

「平田に電話しなきゃ」



そう言って辺りを見渡すけど、私も、ユキもあるはずの携帯が…





ここにはなかった…


私達はゆっくりと、顔を見合わせる。



音を立てて、青ざめるのをはっきりと感じた。





私たちは、出口へと急ぐ。

「あった!あれだよね?」


ユキが指を指す。

その扉は鉄でてきていて、開けるのに一苦労の重さ。

私たちは、恐る恐る、顔を覗かせる。

見渡すと、辺りは暗く潮の香が辺り一面に、漂っていた。



街灯もなく、波音が小さく静寂な闇を包んでいる。




「よし!行くよ。」



小さく私に振り向き合図。


その瞬間だった。


カポン!




あ…




そう、私たちは下駄を履いていたのだ。


その音を合図かの様に
左手方向から強い光りが二つ。


私たちの姿を強く照らし出す。




左手には車が一台。



右手には海。





完全な手詰まり。







ヘッドライトからは、ゾロゾロと、4人のシルエットを浮かび出している。



「鬼ごっこでもするの?」




現れたシルエット一人の男が口を開らいた。







私達は思わず後退りをする。



ザザー-ン…


波が私達二人の足元を濡らす。

いっそこのまま、波にさらわれてしまいたい…。




「どうしてこんな事するのよ!」



ユキが声を張り上げた。

「理由か?理由なぁ…。
狩りだよ。狩り。」




ひゃあ、ひゃあ。





シルエットの男達から嘲笑うかのような笑い声がもれている。





「そうだ!ゲームをしよう。狩りをより、盛り上げるためにな。」










「ルールは?」

「簡単だよ。
鬼ごっこだ!
俺達4人が鬼。
そしてお前達が逃げる。
ただ、それだけだ。」


「捕まったらどうなるの?」


「捕まったらか?
それまでだ!
ENDだ!」


ENDって…そんなわけない!


捕まったら…

確実にやられる!!

私は思わず、ギュッと、ユキの手を握った。


一瞬ユキは、驚いた表情を見せたものの、小さく小声で「大丈夫」そうつぶやいた。



「20秒やる!その間に逃げろ!にげきれた者だけが勝ちだ!
まあ、それはないけどな。」




ゲラゲラとそいつらは、声をあげて笑っていた。




「最後に聞かせて!
誰の命令?
ここの場所は?」



男は少し沈黙をした。



「いいだろ。
場所は新港だ。」



男はそれだけしか言わない。

やはり頼まれたんだ。




「秋山さん早くやりましょうよ!俺もう我慢出来ないっす。」



秋山??


その瞬間、シルエットの一人がお腹を抱えるようにうずくまった。

なにかを怒鳴り散らしていたが波に、邪魔されて上手く聞きとれない。





「よし!やるぞ!
ショータイムだ。」



その言葉と同時に私達は、全力で走りだした。






1…!


私達は夢中で走る。



2…!

「っ!!下駄邪魔!」
苛々しながら私達は下駄を脱ぎすてた。





3…!

走って、力の限り走って!

走り抜いて!!







16…!


「ハァ、ハァ、ハァ…
ユキ、お願い!先に行って!
私より、足早いから!
そして、助け呼んで!」





息が上がる。
苦しい。




17…!



「何言ってんの!?
二人一緒じゃないと駄目だよ!!!」



ユキも、苦しいそうに話しながら、私に言い放つ。







18…!




「このままじゃ。ハァ…
ハァ…二人…やられちゃう!
お願いだから。先に行って!」







19…!


ユキは立ち止まり、押し黙る。







20…!


「ユキ!!
何突っ立ってんよ!」





半泣きで私は、浴衣の袖を乱暴に引っ張った。






「出来ないよ。
そんな事…。
私・・カズキになんて言うの?
なんて言い訳するの?」



涙を堪えながら私に、ユキは食いついた。





その時だった






「ウサギちゃんはどこかな?」






あいつらだ…

あいつらが、もうすぐ来る。








「こんな時に、カズキの話しなんかしないで!
カズキなんて、どこにもいないじゃない!
いつも私の側になんて、いないじゃないのよ。」


「…舞…。」



「今、側にいない人の事はどうでもいいのよっ!!
じゃあ、平田はどうなるの?
平田と結婚するんでしょう?」

ユキは押し黙ったまま、
ギュッと唇を噛み締めていた。



「わかったら、早く行って!私も諦めないから。」



ユキも納得したのか、ゆっくりと頷き、再び走りだした。



「ひゃっほーい!」



背後から奇声が聞こえる。



「ウサギちゃん。発見!」




その言葉と同時に、私の袖が強く引っ張られ、私は大きくバランスを崩し、地面に叩きつけられた。




「舞--!!!」




気付いたのかユキが振り返り叫んでいた。



「ユキ!!行って!」




もう一度立ち上がろうとするが、私は両足を押さえつけられて上手くたちあがれない。




「必ず助けに戻るから!」






お願い!!


神様!!上手くユキだけでも逃げきれて!




「無駄な抵抗やめろよ。
あいつもすぐに、喰われちまうから。」




見知らぬ男は、ヘラヘラ笑い私の上にまたがっていた。