このまま出なかったら、また鳴らすのか。

……出るか。

ガチャ

やはり、10代の若い女だった。

控えめでメイクもしてない、どすっぴんだった。

今時の女はあまりメイクをしないのか。

「え、えっと、と、隣に越して来ました。綾瀬羽衣です。迷惑かけることがあると思いますが、よろしくお願いします」

なんともビクビクした声で挨拶してきて、引っ越しの挨拶の品を渡してきた。

蕎麦か?

それにしてはオシャレだ。

「………く」

「…えっ?」

あー、声が出ない。

「…千﨑祥一郎です。よろしく…」

彼女はぺこりと頭を下げるとすぐさま、部屋に戻って行った。

顔を洗おうと洗面所に行く。

鏡に写った自分の顔を見ると、髭はボーボー、目の下のクマは真っ黒だった。

こりゃ、彼女逃げ帰るわ。