私のアパートは2階建てで、私の部屋は1階の突き当たり。

たまたま上階には人が住んで居らず、隣人は横の『千﨑』さんだけだった。

ピンポーン♪

1チャイム

出て来ないな。

ピンポーン♪

2チャイム

あれ?お留守かな?

3回目を押そうとした時、

ガチャ…

戸がスッと開くと、

中から酷く疲れ顔の無精髭の男が出てきた。

私はびっくりして声が出なかった。

「え、えっと、と、隣に越して来ました。綾瀬羽衣です。迷惑かけることがあると思いますが、よろしくお願いします」

パスタセットを渡すと、

「……く」

「えっ?」

よく聞き取れない声だった。

「…千﨑祥一郎です。よろしく…」

低い声だった。