バイトからの帰り道。 ふと立ち止まると 聴き覚えのないメロディーが 微かに脳内へと流れ込んでくる。 雑多と人が交差するなか 胸に抱いたほんの僅かな興味から 『美沙』は微かなメロディーを辿って歩き出していた。 少し歩いた末にたどり着いたその場所では アコースティックギターを抱えた青年と マイクを握り締める女の子が 次々と新しい旋律を紡ぎだしている。 美沙はそのふたりの、 とりわけ青年の姿に魅入ったまま 動く事が出来なかった。