代わり?薫くんの代わりって何?

薫くんは薫くんしかいないし、城谷さんは城谷さんしかいないのに。


そうやってごまかして、目を瞑ったってきっと誰も幸せになんかなれないのに。


どうしようもない虚無感に息が詰まる。

どうにか横隔膜を使って深く息を吸って、城谷さんの腕を掴んで引き離そうとして――城谷さんの肩越しに、今この状況を最も見られたくない人の顔が私の視界に飛び込んできて目を見開いた。



「優衣ちゃん」



怖いくらいに落ち着いた優しい声だった。


いつも優しく垂れ下がった整った眉は今は平行線。感情の読めない輝きの弱い瞳に私は思わず息を呑んだ。


「薫くん」



小さく震える声でその名前を呼べば、なぜか私を抱き締める城谷さんがぴくりと震えた。