「ここちゃん起きてる?」

「起きてますよ」

「よかった。具合はどう?」

部屋にやって来た信洋さんは私の前で腰を下ろすと、熱を測るみたいに額に触れられる。

「熱はないね。気持ち悪いとかある?」

「コク」

問診のように、頷いたり首を横に振って伝えるけど、やりすぎて気持ち悪くなってきた。

それを察してくれたのか、信洋さんの質問は止まる。

「ここちゃん、倒れる前のこと、覚えてる?」

「…コク」

正直曖昧で、はっきりとは覚えていない。

でも、あの、野菜についた変なぬめりは覚えてる。それを確かめようとして、触って…そしたら、気持ち悪くなって、それで…。 

ダメだそれ以上思い出せない。

あれが毒だったのかな。でも、それ以外に思い浮かぶこともない。

それを暁くん伝いに信洋さんに伝えると、思い当たったことがあったのか、その表情を険しくさせた。