「俺は養父母には感謝しているし、笹口の家の皆は大好きだ。だが、俺にはタチの悪い血が流れている。だから、この血を絶やすために一生結婚はしない。独身でいい」

初めて笹口の生い立ちを聞いた時、そんなことを言っていた。
その思いはブレずに今もそのままなんだと思う。何かそれって……凄く切ないか?

「それでも、もしお前を好きって奴が……」
「そんな奴は一生現われない」

笹口の三白眼が僕を睨む。怖っ!
そう、奴はワザとこの眼で人を遠ざける。特に女を。

「僕は哲ちゃんのこと好きだよ」

美山がフワリと微笑みサラリと告白する。
だが、この鈍感男は……。

「ああ、俺もお前たちは好きだ」と返事をして、その後に『逃げ込み家』のチビたちとマスターも好きだぜと宣う。

本当、美山の気も知らないで。三発ほどブッ叩いてやろうか!

でも、そんな返事にも美山は、綺麗な微笑みを浮かべて笹口に「ありがとう」と礼を言う。

何だか、僕の方が胸が苦しくなる。

「でも、そう言う春太はどうなんだ? お前も女っ気ゼロじゃないか!」

まぁ、それを言われたら、何も言えなくなるんだが……。