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あれ以来、叔父は店を休み塞ぎ込んでいる。
もう二日も姿を見ていない。

母は、「もう、また守の気紛れが始まった!」と表面上は怒っているが、トヨ子ちゃんの件なのは百も承知みたいだ。内心、物凄く心配している。

「トヨ子ちゃん、結婚するの?」

美山が心配そうに訊ねる。叔父の恋心を知っているからだ。切ない胸の内は我が身に通じるところがあるらしく、よく叔父を励ましていた。

「好きとか愛とか、何か面倒臭いな」

笹口がラムネアイスに齧り付く。
その横顔を切なそうに美山が見つめる。

思わず笹口の頭を張り倒しそうになる。
この鈍感ヤロー!

「なぁ、笹口って今まで好きな奴いなかったのか?」
「いない!」

即答だ。

「愛だの恋だのより、武道で精神と身体を鍛える方が性に合っている」

笹口は自分が養子だということを知っている。そして、なぜそうなったかも。
だからだろうか、『愛』というものを敬遠しているところがある。