呆然と固まったまま、タクシーは停まった。
ハッと我に返ると、大きなマンションの前だった。
市街地に程近い、高層マンションだ。他にもビルが建ち並ぶ。
「ここは…」
「僕の部屋です。休んで行きませんか」
なんだこの、ラブホの休憩みたいな誘い方は。
「か、帰りますっ!!」
グイッと引っ張られ、半ば強引に出された。
「帰しませんよ」
料金を支払うと、ドアを閉められ、タクシーは去っていってしまった。
最悪すぐにタクシーは呼べそうな場所ではあるけれど。
「覚えておいてもらわないと、本をお願いできませんからね」
「ですからそれは」
「嘘ですよ」