「松嶋さん、ちょっといいですか」


挨拶回りをしてふたつ隣のテーブルにいた、同行したうちの課長に呼ばれ、テーブルを離れた松嶋さん。


そのどくさに促されるようにそのまま会場を抜けた工藤さんと私。


「えっ??えっ???」


ドアを開けると、入れ違いにトイレで席を立っていた他の支店の男性が入ってくる。


「どうも、お疲れ様です」

「年を取ると近くていけないね」


などと苦笑いで世間話をしながら。


「これは虫除けですよ」

「はっ!?」


言うと、左手の指輪を外す。


「え"っ??え"え"っ!!??」

「独身なんですホントは」