「ところで深雪さんは恋人はいないんですか??」
あまりにも唐突な、しかも工藤さんからの言葉に驚く。
「みゆ……」
さらにいきなり下の名前で!?と。
「ああ、えっと、今は……」
「振られたんですよね、確か営業課の…」
「ちち、違いますっ!!あれは…」
傷口に塩を塗られ刺身包丁でエグられそうになって慌てる。
「隠すことないでしょう??親戚がお金持ちだって嘘までついて近付いて。詐欺ですよ」
あくまでも爽やかな笑顔は崩さない。
なんでそんなことまで知ってるの!?と青ざめる私。
「僕じゃダメですか??」
「―――はい!?」
どこかで聞いた台詞がデジャヴする。
松嶋さんが眉をぴくりと動かした。
そんなわけはない。酔ってる??
確かにお酒も振る舞われ、微かに香水の香りに混ざって、匂いはした。
焦った私は工藤さんを見上げる。耳元に唇が近付いて、何かを囁いた。
「………は、はい」