正直にそう言うと、啓介は怒ったように言葉を返した。

「評価って、誰がすんの? 僕たちのことをあれこれ言う権利なんて誰にもない。決めるのは彩奈自身だろ?」

 彩奈は無言で蛇口をひねり、水を止める。

「絶対大事にするから」

 啓介の腕に力がこもる。
 彩奈は黙って、洗い桶のなかに広がる波紋を見つめた。

「ちょっとくらい太めなほうが、僕は好きだし」

余計なお世話だ、と肩の上に置かれている啓介の手の甲をつねる。
「いたた」と言うけど、それは自業自得。


「なによ。私とはキスしないって言ったくせに」
「あの場ではそう言うしかなかったじゃん」

 啓介の額が、頭のてっぺんにこつんと触れる。
 暑い夏のさかりなのに、啓介はかすかにふるえていた。