区役所から家までの足取りは、ひたすら重かった。

職員さんに指摘されて気がついたのだ。

……確かに、私は婚姻届の行く末を最後まで見届けていない。

途中でお母さんから電話が掛かってきて……席を外してその後のことは全く知らない。

私がいない間にどんなやり取りがされたのかは分からないが、事実として残っているのは。

“未届けの妻”

……つまり、私はまだ独身ということだ。

やりきれない思いで、もらいたての住民票をグシャリと手で握りつぶす。

私達は最初から恋人でなければ、夫婦でもなかった。

まったくの赤の他人だったんだ……。

(古賀くんは……最初から私と結婚する気なんてなかったんだ……)

一体、私の悩みとは何だったのだろうか。

幸せの絶頂から不幸のどん底まで突き落とされるような思いだ。

どうして婚姻届が受理されていないのか。

あらかじめ計画されたものか、はたまた偶然だったのか。今となってはどうでもいい。

故意にしろ偶然にしろ、半年以上もその事実を隠蔽していたというのは悪意でしかない。