君と過ごした四年間は、短いようでとても長い四年だった。


その四年間で、私は君と出逢って、恋をして、愛を知って、別れを経験した。


君を好きになったことも、君を愛したことも、私は少しも後悔していない。


出逢ってくれて、ありがとう。私を選んでくれて、ありがとう。


普通の経験は、ほとんどできなかったけれど、君と過ごした四年の記憶は今も私の中に大切に保管してある。


「そういえば、柳くんが結婚するんだって。若葉はもう子供二人目だって言ってた。茉莉は一人目が幼稚園、絵里も結婚までもうすぐだって」


君と過ごした四年間はとても長かったけれど、君と別れた後の七年は、あっという間だ。


みんながそれぞれにそれぞれの道を歩いて行っている。それを寂しいと思うことはないけれど、周りが進んでいくたびに、私は途中で立ち止まるしかなかった真空を思い出す。


「……私ね、お母さんの後を継ごうと思う」


猫たちのために立ち上げたNPO法人。その代表をしているお母さんの後を継ぐと決めたのは、小冬が家に来たとき。


ねこだった君と、きっとねこだった真雪。そして、いつかひとになる小冬。


君は、にんげんにあこがれていたんだと言っていたね。だから、にんげんになるねこたちが、セカイに絶望しないように。私は私にできることがしたいと、強く思ったのだ。


「今でも君がいたら、と思うことはあるよ。でも、今の私はちゃんと君のお陰で、頼ることを知ってるから、大丈夫」


君にはきっと死んだ後も心配をかけたね。でも、もう大丈夫だから。長い間心配かけて、ごめんね。


「ありがとう、真空。いつまでも、大好き」


君以上に愛せるひとは、もういない。


でも、それでいいんだ。私の中では。君と出逢って、一生分の恋をした。一生分の愛も、君に向けた。だから、君からもらった一生分の愛を使って、私は真雪と幸せになるよ。


幸せになるという約束は、私が生きている限り有効なものだ。


立ち上がって、空を見上げる。真っ青な空は、真空の名前そのもの。真空、と心の中で呼びかけると、ふわりと拭いた風が私の髪の毛を撫でていった。


それが真空からの返事に思えて、思わずふと笑みを漏らす。おかあさあん、と遠くから聞こえてきた娘の声に、また来るね、と一言かけるとその場を後にした。