お昼の時間になるといつもマーティーは迎えにきてくれる。今日はいつもより時間が遅いようだ。やっと来た彼はまたご機嫌だった。「なあ、聞いてくれよ!今日あの子と話した」僕もだ、とは言えない勢いだった。「リリーって名前で」うなずいて聞いていることしかできないがよく人のことでこんなにも熱くなれると思う。「リリーは物静かだった。もしくは俺のことが嫌いかだ」「マーティーのこと嫌うやつなんていないよ」「誰にも嫌われないやつなんていない」「僕も今朝リリーと話した」マーティーは驚いていた。それは見覚えがある。あぁ、そうだ、僕がケイシーと話したとき。それは僕が女の子と全く話さないということを意味する。「静かなだけだよ」そう言うと彼はそうかと笑った。ふと頭をよぎるある思いが沸き上がる。前の僕なら決して言わなかった言葉だろう。「静かな子だって、目立たない僕みたいな子だって思ったからリリーを誘わせようとしてるんだろ」びっくりしているマーティーの顔は僕には白々しいものにしか見えなかった。「なんでそんなこと言うんだ」「君には感謝してるけど結局僕を下に見てバカにしてる」「俺はバカにしてない」もう後戻りはできなかった。一度出てきた思いを口に出すと傷つけるとわかっていても止められなかった。「今まで俺がそんな目で見てると思ってたのか」「僕みたいな可哀想なやつを助けないといけないなんて思わなくていい。もうほっといてくれ」彼と喧嘩したのは初めてだった。その理由として挙げられるのは今までの僕らは特に仲がいいというわけでもなかったからだ。