その時いきなり強い風が吹いた。浮かれていた僕の手からノートが飛んでいった。風はすぐに止み僕は飛ばされた方を目で追った。急いで取りに行くと、ノートを取る寸前で誰かと手が当たった。その手は僕のノートを拾い名前を見た。「ジェフ・アドラム」その声を聞いて僕はすぐに顔をあげた。「あ、僕のだ」ノートを拾ってくれたのは学校で人気者のケイシーだった。「こんにちわ」「やあ」そう言い合い彼女はノートを渡してくれた。「風強いものね」「うん」上手く話せないでいる僕に笑いかけてくれた。「じゃあまたね、ジェフ」「あ、君こそ」手を挙げた僕に彼女は再び笑いながら「ケイシーよ。ケイシー・ダンカン」
 ドタドタと階段を駆け上る。マーティーの家の階段は段が高く一歩踏み外せば危うく転げ落ちそうな階段だ。「マーティー!」僕を見たマーティーは携帯に目を落とした。「ママじゃあるまいし、ノックしてくれ」彼に軽く謝り僕は本題を話そうとした。もちろん今日起きたことだ。すべてを話終わったときマーティーは驚いていた。「うわぁお!それってすげぇよ!」さっきからその言葉を連発している。しばらくは終わらなさそうなので少し待つことにした。「ジェフ。あのケイシーに?!一躍お前も有名人だな」大袈裟なマーティーに呆れながらもずっと気になっていたことがあった。「あいつは見てたかな?」あいつでは彼には伝わらずきょとんとしている。「ルーカスだ」マーティーは笑いながら僕に告げた。「おい、まさかルーカスが怖いのか?」「あんなとこを見られたらなんて言われるか」焦る僕に対しマーティーは全くと言っていいほど焦ってはいない。「あいつがケイシーと話してるの見たことあるけどロボットになってたな」笑いをこらえられなかったマーティーは大笑いした。そしてそのときのルーカスの真似をし出した。「マーティー、やめろよ。似てないぞ」そう言いながらも笑わずにはいられなかった。