「こっち地元?」

「あ、いえ。静岡です」

「静岡?」

「はい」

今度は桃川さんが訊き返してきたので、ちょっとだけどそちらを見て返事をしました。

「そうなんだ、じゃあ東海地方だね。タケね、愛知だよ」

桃川さんがそう言うと、武田さんは本から少しだけ顔を上げました。

なるほど、桃川さんからは”タケ”と呼ばれているのですね。

うう。
目つきが悪いです、武田さん。

「でも、オレは名古屋の隣だから、静岡のことあんまよく知らないし」

言うだけ言うと、すぐにまた本を読み始めました。

ぬぬぬぬぬ!!

よくある東海問題ですね!

愛知の人はすぐに名古屋を持ち出します。

ふんだっ!

静岡は神奈川の隣、つまり関東寄りなんだぞっ。
どうだ!


「真由ちゃん」

ん?

桃川さんのほうを見ると、半笑いで私を見てます。

「タケね、悪気はないヤツだからね」

はっ!

私の心の声がきこえたんでしょうか!?
アセアセ。

「は、はいっ!」

「そそ、武田くんはね、人見知り激しいから」

絵里さんもニコニコしながら私に言うと、「ねっ」って武田さんに向かって言いました。

しっ、しかしっ。

本に目を向けたまま、「さぁ」ですと!

失礼な男ですねっ。
プンプンですよっ!