ひゃっ!

しがみついた私をぎゅってされました。

「やったね~。こういう展開待ってました~」

ううう。

桃川さんに反論できません。

いつもなら怒って離れるところなんですが、
こわくってそういうこともできません。

桃川さんの思うツボです。

そして、そう思ってる自分自身がこういうことになってこわいんですけど、
くっついてられるのはちょっとだけ嬉しいって思ってたりします。

も、もちろん、
すこーしなんですよ。すこーし!
ホントにすこーしなのです!


受付を通って中へと進んでいきます。

はい、桃川さんの胸に飛び込んでる状態で
どこをどう歩いているのかまったく把握できません。

ううう、早く外に出たいよぉ。


「ヒュ~、ドロドロドロ」

「ぎゃああああ」

桃川さんが耳元で
例のお化け登場の時に決まってかかる効果音のマネをしました。

「もう!」

私は思いっきり桃川のおなかを殴っちゃいました。

「うっ……」

あ!

桃川さんの息を呑む音がしました。

はい、殴った時にドスッて音もしました。

多分、勢いあまってけっこうな力が入ってたと思います。