私たちの席は真ん中らへんの列で席も真ん中らへんですね。
すでに座っていた人を前を過ぎる時にそのつどペコペコと頭を下げながら通って席につきました。
はぁ~。
それにしても、桃川さんがおトナリさんなんですね。
改めて実感してますますキンチョーしてきました。
席に着いて石田さんを見ると、
石田さんは前から3番目の左端に座りました。
頭が少しだけしか見えませんけど、おそらくは隣はコイケンさんですね、
石田さんが座りながらなにか話しかけてたんで。
「石田さんたち、前のほうなんですね」
「そだねー」
「よかったんですかね?」
「ん?なにが?」
「いや、センパイたち前に座らせて」
「あぁ、いいんじゃん?石田さん、前で見るの好きだもん」
「そうなんですか?」
変わってるような気がします。
しませんか?
普通、前の席は首が疲れるからけっこう敬遠されがちだと思うんですよね。
それに加えて、会場によっては頭が邪魔になることを気にして、
背の高い男性なんかは嫌がることが多いと思います。
「うん。前のほうで迫力あるほうがいんだってさ」
「そうなんですね~」
「それに2人に見えないからエンリョなく真由ちゃんといちゃつけるしー」
「はい!?」
「ウソウソ」
横を見ると、いかにも「冗談でした」という顔をしてます。
というか!
改めて横を見てまた実感。
けっこうな至近距離ですね。
はうう。心臓に悪いですね。
急いで私は前を向きました。
ふぅ~。
「桃川さんひどいですよぉ」
「いや、ちょこっとくらいはいちゃつきたいかな~、みたいな」
「はいっ?」
「まぁまぁ。そんな感じですなぁ」
「どんな感じなんですか!」
あ!
一段と照明のトーンが落ちまして予告が始まりました。
いよいよですね。
あ。
桃川さんがスマホの電源を切ってるので、私も慌ててバッグから取り出して電源オフします。