「あ、そういえばさー」

桃川さん、思い出したように私を見てきました。

「真由ちゃん、木下美紀(キノシタミキ)って知ってる?」

きのしたみき?
誰だ、それ。

「いえ、知りません」

「あ、そう。ま、そうだよね。同じ文学部でも専攻違ったもんな、確か」

桃川さんは独り言のようにつぶやいています。

えー、誰なんでしょう。

も、もしや!
その方が桃川さんのカノジョさんでしょうか!?


「いや、あのね、オレの高校ん時の後輩なんだけどね」

後輩かぁ……。

いや、でも、それだけのカンケーなのでしょうか?
うん、怪しいですね。

「ウチのサークルに入りたいらしいんだわ」

あ、なんか今ですね、心にザラッとしたなにかが触れました。
なんでしょうかね、これ……。

なんだかあんまりききたくないような気分です。

「そうなんですかぁ」

「うん。ま、いっか。多分、明日ぐらいサークルに顔出しにくると思うんだよね」

「そうですか……」