「なになに。なんの話してんだよー」

石田さんが会話に首を突っ込んできました。

お猪口に入ったなにかをクイッと飲ます。

えぇ、おそらく烏龍茶です。
でも、なんだかお猪口がしっくりくる石田さんなのです。


そういえば、男性陣の会話がピタっとやんで全員がこちらを見ていますね。


「モモと尾崎さんの話です」

絵里さんがめっちゃ笑ってます。

「はぁ!?なに話しちゃってんの」

桃川さん、愕然としました……。

珍しいです、こんな桃川さん。


「あれはー事故だから!」

事故?

桃川さんの発言を受けて石田さんが吹き出しちゃいました。

石田さんだけじゃありません。
私たち1年以外はみなさんにやついています。

「まーな、事故だねー。あれは」

ニッタニッタしながら石田さんは顎に左手を添えてコクコクとうなずいてます。

「なんなんですか?事故って。尾崎って人と桃川さん、どうしたんですか?」

藤木くんが好奇心にかられた様子で石田さんを見ました。

「付き合ってたの」
「わ~~~~~!」

絵里の発言を被せるように桃川さんが奇声を発しましたよ!
しかも、思いきり耳をふさいで叫んじゃってます!

「もういいじゃん。あれって時効なんでしょ」

「そう思うんだったら、なおさら知らない人間に教える必要はな~い!」

絵里さんがニヤッと笑って言ったことに対して、あの桃川さんがすねたように口をとがらせて訴えています。


「まぁまぁ。青かったんだね、あの頃は君も~」

遠い目をして遠藤さんが桃川さんの肩をポンポンと叩いてます。

「もう知らん!」

桃川さん、私たちに背中を向けて体育座りをしちゃいました。

どうしたんでしょうね。
よっぽどふれられたくない過去なんですね。

いわゆる黒歴史というヤツなのですね。きっと。