この日はやけに雨足が強かった。外に出ようとするにも、傘は役に立たず車を運転しようにも前が見辛い日であった。カーテンも閉め、電気もつけず部屋にたたずむ高校生ぐらいの男は、涙をながしながら
 「ごめん、俺の心が弱かったから・・・、でも君は関係ないよ、君は俺を忘れて生きていってほしい。君には幸せになってほしいんだ」
 机に向かって泣きながらたたずんでいた。その涙は、恨みや憎しみからの涙ではない。彼女を置いて先に旅立つ、自分への後悔だろう。だが、それはもう我慢の限界だった・・・
ベットの横に正座の形で座り、スマホで彼女に
 「今までありがとう、迷惑ばかりかけてごめんね」と送り、スマホを床に置きその手でカッターを強く握りしめ、左手首を深く切りつけた。