「オフィーリアだ!遊びにきたの?その頭巾可愛いねぇ。」
悪戯っ子のきつねがやってきて、普段は全く使わないような言葉を口にしました。
オフィーリアはとっても注目されて、褒められる事に嬉しくなりました。
「皆、皆、ありがとう!この赤頭巾、毎日被ってくるわね!」
いつの間にか、森のほとんどの動物達が集まっていました。
そんな時です。
オフィーリアは木の影から自分を見つめる一つの視線に気づきました。
森の仲間がいつも口々に一番怖いと言うオオカミさんです。
でもオフィーリアはやさしいこ。
「あら、オオカミさん。こっちにきて、一緒にお話ししましょう?」
そうオオカミさんに話しかけました。
しかし、オオカミさんは走ってどこかへ行ってしまいました。
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それからオフィーリアは約束通り毎日赤い頭巾を被って森へ行きました。
赤い頭巾を被って踊り
赤い頭巾を被って歌い
赤い頭巾を被って動物達と遊びました
いつしかオフィーリアは『赤頭巾』と呼ばれるようになり、オフィーリア自身も赤頭巾と呼ばれることに慣れてきていました。
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そして、ある朝のこと
「オフィーリア、おはよう」
「もう!ママ、赤頭巾って呼んでって何度いったらわかるのよーっ!」
「オフィーリア、今日はそんなことを言っている場合じゃ無いわ。おばあちゃまが倒れたの……」
お母さんが悲しそうに言ったことばにオフィーリアはとても驚きました。
「それでね、オフィーリアにはお見舞いに行ってきてもらいたいの。」
お母さんはそういうと、ワインとパンとチーズの入ったバスケットを彼女に渡しました。
「わかったわ!じゃあママ、行ってくるわね!」
オフィーリアはそういうとニッコリと微笑みました。
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「いい、オフィーリア。今からママの言うことはちゃんと守ってちょうだい。」
オフィーリアはいつになく真剣なかおをして言うお母さんに不思議な気分になりながらも、小さく頷きました。
「一つ目は、チーズやパンは決してなくさないこと。ママはこれ以上のものは買えないけど、ママからの精一杯の気持ちだからね?
二つ目に寄り道はしないこと。オフィーリアのお友達はとってもいい子ばかりだけど、中には悪い子もいるんだからね?」
「うん。わかった。それじゃあ行ってきます」
オフィーリアは最後に頭巾を被ると、扉を開けました。
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「ちょっと寒いなぁ……」
ちょうど秋にかかったこの季節。
少し離れたおばあちゃんの家にいくので何時間もかかるのでオフィーリアは朝方早くに出ました。
そのせいか、彼女は少し肌寒く感じました。
「私のお友達には悪い子はいないわ。ちょっとなら、平気よね……?」
オフィーリアはお母さんに言われたことを破って、ちょうちょさんと遊びながらおばあちゃんの家に向かいました。
白
黄色
紫に
オレンジ
鮮やかな蝶達がオフィーリアを囲みながら飛んでいきます。
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そんな風に誰が見てもほほえましいその光景は、蝶達がいなくなることで終わってしまったのです。
パサ
小さな羽音をたて、蝶達が一斉に逃げていったのです。
「あ、待って、ちょうちょさん!」
オフィーリアはさりゆく蝶をさみしげな表情で見ました。
そんなときです。
後ろからかさかさと落ち葉のかすれるような音がしました。
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見えたのはすらりとのびた美しい四本の足。
オオカミの足でした。
「あら、オオカミさん!こんにちは。」
「赤頭巾ちゃんかな?こんにちは。今日はこんなところでどうしたんだい?」
オオカミはオフィーリアに気づかれないように舌なめずりをしたあとに、優しい声で語りかけました。
「今からおばあちゃんのお見舞いに行くの♪ほらっ」
オフィーリアは疑うことを知らない純粋な心でバスケットをオオカミに見せました。
その時、オオカミはあることを思い付いたのです。
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もし、先回りしたらまごがきたと思っておばあちゃんは鍵を開けてくれて、きっと食べれるだろう
もしかしたら赤頭巾のこともバスケットの中身も食べれるかもしれない。
オオカミは心の中でにやりと笑いました。
「そうか。赤頭巾ちゃんは偉いねぇ。じゃあいいこと教えてあげる!」
そういうと、オオカミは獣道へと入っていきます。
オフィーリアはオオカミとはお友達だと思っていたので、期待に胸を膨らませながらオオカミについていきました。
遅れないように、いつもより少し早めに歩きます。
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何分歩いたのでしょう?
少し早足で歩くオオカミについていくオフィーリアは、疲れてきていました。
まだ幼く、歩幅も小さい、そのうえ体力もあまりないのだから、きっとここまで歩いてくるのも大変な事だったでしょう。
「オオカミさん、まだつかない?足、痛くなってきちゃった……」
そうすると、オオカミはオフィーリアのほうに振り返りました。
「おや?それは悪かった。でもあと少しだからもうちょっとだけ頑張れるかい?」
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