「今日はお疲れ様でした」

 私はベッドで横になっている副社長に言った。


「ああ…… おかしいと思わないか? 社長の奴、あんな白々しい挨拶しやがって、俺の事は一言も触れないし、俺に挨拶もさせない。俺の立場って物も考えろ!」


「ああ…… でも、社長の挨拶素晴らしかったじゃないですか。それに、今日は企業と下請け会社への感謝の気持ちだった訳だし……」


「お前には分からないんだよ。俺の立場が! だいたいうちの奴だって、俺より出しゃばりやがって。昔の実力の自慢かよ! みんな、奥様、奥様ってちやほやしやがって。あいつも、愛想振り撒きやがって、俺の事バカにしてやがる。だから大手の企業だって、俺の事バカにして話も聞きゃしない…… それに、俺より高い時計持ってた奴がいた」


 副社長の愚痴と悪口は永遠に続いた。

 何か言おうもんなら激しくなる一方で、私は黙って座っているしかなかった。



 すべて上手くいかないのは人のせい。
 大事なのは自分の立場と言うことが良く分かった。

 いい加減に私もうんざりしてきた。


「あの…… 副社長。私、明日法事があって、父が朝早く迎えにくるんです。申し訳ありませんが、そろそろ……」

 勿論嘘だ……


「えっ。そうなのか? 流石にお父さんと鉢合わせはまずいよな」


 副社長はそう言うと服を着始め、帰ってくれた……



 私は、さてどうするべきか考えた……

 冷静に考えてみたが……


 やばい、私もあの人いらない!


 どうしよう、彼女、私に副社長を押し付ける気だ……


 でも、もしこれが彼女の副社長を取り戻す為の作戦だとしたら……


 私はもう一度冷静に考えた。

 副社長が奥さんの元に帰ってしまったら……


 別に、かまわない!


 やばい、本当にあの人いらないよ……