「で、朝はどんな感じだったの?」

「私は爆睡してたけど、武田さんは朝日と共に目覚めて、日課のジョギングしてたらしい」

「あらぁ、こんな時でも朝のルーティンは欠かさないのねぇ」

「ストイックー」

今朝のことを思い出す。
武田さんがちょうどジョギングから帰ってきたときに、私はその物音で目が覚めた。
寝起きのぼーっとした目で、動く人影を追ってみれば……
濡れた前髪、汗の滴る横顔、ランニングウェアから伸びる筋肉質な手足。そして汗を拭いた瞬間の腹チラ……など、普段お目にかかれない武田さんを見ることができた。

彼がシャワーで汗を流したあと、髪をガチガチに固めて『いつもの武田さん』に変身したときは、かなりホッとした。

「オフの武田さん」をみると、変な動悸がするから、普段の姿に戻ってくれて本当に良かった。

「それで、朝ごはん作ってくれて」

「上司に朝ごはん作らせたの!?」

「え、うん、だし巻きと味噌汁と鮭とご飯……美味しかったよ」

それはもう、至れりつくせり……こんなにちゃんとした朝食を食べたのは久しぶりで、涙が出そうなほど美味しく感じた。
食後に温かい緑茶まで出してくれちゃったりして。

今朝の武田さんはもはや上司などではなく「お母さん」だったような気がする。