「布団は一組しかない。お前はここで寝るといい」

武田さんは大きな押し入れから布団を出してきて、部屋の一番奥に敷いた。

「いや、いいです! 本当に、全然、私その辺で転がっとくので!!」

と言ったものの、家主はその言葉を無視して「カバーは新しいものにしておく」と、枕カバーや敷布団のシーツを替え始めた。

「俺は車で寝るから、気にするな」

「いやいやいやいやいやいや……家主を車で寝かせるわけには」

「男女が同じ部屋に寝るというのも問題だろう」

「私は平気です! 武田さんが気にするなら私が車で寝ますから!」

「……それはなお一層問題だ」

「でしょ!!私はほんとどこでも寝れるタイプなんで大丈夫です!こっちの隅っこで寝ますし。武田さんは明日も仕事ですよね。ちゃんと寝ないと」

「うむ……では、お前が布団で寝ろ。上司からの頼みだ」

「頼み……」

そうこられると、断りずらい。
武田さんは押し入れから座布団を出してきて並べ、部屋の端に簡易的な寝床作った。

「俺はここで寝る」

「はい、分かりました……」